民事信託を利用した認知症対策

 

民事太郎さん(87歳)は、奥さんはすでに他界され、一人暮らしをしています。

 

最近は、物忘れが激しくなってきました。

 

 

 

    近くには一人息子の民事次郎さん(53歳)のご家族  (妻、子供2 人)が住んで、時々太郎さんの世話をしています。

 

 

 

太郎さんの心配事(希望)

・認知症にならないか心配になってきた。

(認知症になったら何もできない)

・息子たちにはなるべく、迷惑をかけたくない。

・一人で生活できる間はこのまま自宅に住みたい。

                                ・一人で生活できなくなったら、自宅を売却してもらって、施設に入ってもよい。

 


 

 

 

太郎さんの財産

・自宅(土地建物)(住宅ローンは支払い済み)

 

・預貯金(定期預金含む)5000万円

 


 

もし、このまま何もせずに、認知症にかかってしまうとどうなるでしょうか

 

 

一人で暮らせないので、次郎さん一家が太郎さんの面倒を見ないといけない。

 

しかし、預貯金は、凍結されて引き出せない。

 

太郎さんの介護のお金は、次郎さんが負担することになる。

 

施設に入所しようとしても、入所契約を結ぶことができない。

 

入所締結をするには、家庭裁判所に成年後見人を選んでもらう必要がある。

 

成年後見人がつくと、あとは成年後見人が財産を管理することになる。

 

郎さんのお金を郎さん家族のために使うことはできない。

 

自宅を売ろうとしても、成年後見人が納得しない。

 家庭裁判所の許可もおりない。

 

成年後見人に支払う報酬が発生してしまう。

 

これでは、太郎さんの希望通りにならないことが、お分かりいただけると思います。

そこで、これらの問題を解消するために、民事信託を利用します。

 

  

どのように信託を設定するか

 

 

 

まず、委託者を太郎さん、

 

受託者を次郎さんとして、

 

信託契約を結びます。

 

そして、信託によって利益を受け取る方(受益者)も太郎さんとします。

☑信託目的は、信託財産の適切な管理・運用・処分によって、次郎さんたちに迷惑をかけず、太郎さんの安定した生活を維持すること

 

☑不動産や預貯金が信託されたことをはっきりさせるために、受託者は自宅の信託登記をし、預貯金は信託口口座を開設し、そこで管理します。

 

☑太郎さん(父)は、そのまま自宅に住むことができます。

 

☑受託者(次郎さん)は、太郎さん(父)に毎月、必要なお金を給付し、太郎さんの生活をサポートします。

 

☑太郎さんが施設に入所したら、自宅の売却の手続きをします。

 

☑自宅の売却は、次郎さんがやってくれます。

 

☑自宅の売却代金は、太郎さん(お父さん)のために使います。

 

☑太郎さんが亡くなると、信託を終了し、残った財産は次郎さんが取得します。

 

 

信託によって何が変わるのか


太郎さんが認知症にかかっても(成年後見人がついても)

 

☑太郎さんは、引き続き安心して自宅で暮らすことができる。

 

 

 

☑次郎さんは、太郎さんの預貯金の引き出しや解約をすることができる。

 

次郎さんが、太郎さんの自宅を売却することができる。

 

預貯金や自宅の売却金を太郎さんのために使うことができる。

 

 

信託でできないこともあります

民事信託ではカバーできない点として、施設への入所契約が挙げられます。

判断能力が低下した人が入所契約をするには、成年後見人をつける必要があります。

 

民事信託はあくまでも委託者本人の財産の管理や運用等に限られており、ご本人の身上監護事務は含まれていないためです。

 

 

従いまして、認知症にかかってしまった場合は、財産管理以外の入所契約等の法律的なことをするには、成年後見人を立てるほかないとなりますが、この場合でも認知症になる前に、誰かと後見人契約を結んでおくと、次郎さんが太郎さんのために代理人として、入所契約を結ぶことができます。

 

 

この契約を任意後見契約と呼び、民事信託との併用が有効です。

任意後見契約の詳しいことは、こちらをどうぞ。